けいれんや意識障害の症状や経過をよく観察しておくことがきわめて重要です。
なぜならば、それが治療方針を決める最大の情報源になるからです。
ところが、患者さんが病院に到着した時にはすでに症状が治まっていることがほとんどです。
医療従事者が観察できる機会はあまりありません。
ですから、現場に居合わせた人が、落ち着いてよく観察して覚えていることが
必要です。
すなわち、自分がビデオカメラになったつもりで、時々刻々変化する症状を映像として脳裏に焼き付けておいて下さい。
観察するポイントとしては、以下のものが挙げられます。
@ 発作の始まる様子
発作の始まる様子が最も重要です。
万が一、目の前で発作が起こってきたら注意して観察して下さい。
つまり、直前まで何の前兆もなくいきなり全身にけいれんが起こったのか、けいれんが身体の一部から始まってから全身に広がっていったのか。
あるいは、けいれんが始まる前に意識がだんだん遠のいていったのか、最後までけいれんは起こらず意識障害だけだったのか見て下さい。
A 経時的な変化
発作の様子は時間の経過とともに変化します。
顔つき (表情の変化、顔のゆがみの左右差、わけのわからない言動)
顔色の変化 (赤み〜蒼白〜紫色のチアノーゼ)
眼球 (目の位置がどちらかに偏位したまま〜目の不自然な動き〜眼振 )
手足の様子 (けいれんの強さの左右差、けいれんが始まった時間のずれ、手足の格好の左右差、手足は曲がったまま〜途中から突っ張る〜身づくろいするようなしぐさ、場違いな不自然な動作)
意識状態の変化 (いきなり意識がなくなるのか、だんだんに意識が遠のいて
しまうのか)
B 発作の止まる様子
発作の始まりは偶然にしか観察されません。
しかし、発作の止まる様子は、発作に気が付けば必ず観察できます。
けいれんがいきなり止まったのか徐々に小さくなっていったのか、意識は突然回復したのか段々にはっきりしていったのか、これらのことが大いに参考になります。
C 何が原因か
事故、けが、中毒を思わせる状況証拠がないか周囲を観察して下さい。
熱の原因となるような感染症の症状はなかったか。熱は出てないか。
てんかんの病歴がないのか。他に何かけいれんを起こすような病気を
持っていないか。
これら観察したことを、メモにでも写実的に記録しておいて下さい。診察の際に非常に役立ちます。