![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() ![]() 感電で思い出すエピソードがあります。医学生の頃、西穂高岳に登山に行った時のことです。もう少しで山頂というところで雷が遠くの方で一回なりました。もう少しだからとそのまま登っていたら、突如自分たちの周りで稲光と同時に雷鳴が鳴ったのです!雷と同じ高さにいるのです。至近距離にいるのです。むかし、この近辺で高校生の登山の一行が雷に打たれた悲惨な事故を思い出しました。もう生きた心地がしません。自分の指を見ると血の気が失せて蒼白になってふるえる状態です。命からがら山小屋まで逃げ帰りました。そして雷が遠ざかったのを見計らって、ふもとまで下りたのです。 登頂できないどころか苦い思いをした私は、同行の友人と気分直しに新穂高温泉の温泉に入って行く事にしたのです。そこは野趣あふれた川沿いの露天風呂でした。あふれたお湯が川に流れ込んでゆくのです。雷は遠のいていって、はるかむこうの方でわずかな稲光とそれに遅れて小さな雷鳴が聞こえます。ついさっきまでは死ぬかと思ったのに、いまは打って変わって湯船に入っていい気分です。 ところが、その雷がどこか遠くで落ちたのです。その瞬間、湯船に入っていた体の表面全部にビリビリッと電気が走ったのです。お湯につかっていた全員がその瞬間に湯船からカエルのようにピョーンと飛び出て岩の上に乗り移りました。たまげるとはこのことです。「電気で撃たれたかのように」ではなく、まさに正真正銘電気に撃たれたのですから。遠くに落ちた雷が川を伝って露天風呂の中まで電気を走らせたのです。私は素っ裸で岩の上にしゃがみこんで、なかなか興奮が収まりません。もう恐ろしくって湯船には入れません。 雷は、川の水や温泉の中を通ってゆきました。でも、私の体の中を通過することはありませんでした。私の体の表面をなぞっていったのです。電気は水の方が流れやすいのです。 雷がどれほどの高電圧だったか、知る由もありません。たかだか200V程度の感電では人体には影響が及ぶことはあまりないでしょう。しかも赤ちゃんは羊水に守られていたのですから安心です。それは私自身が、身をもって実証したのですから。 2012年5月8日
|
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |