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小児科の診察室のエピソード2 かんごふさん

コラム2 かんごふさん

二十数年前、私は大学病院で研修医生活をスタートさせた。毎日やることがたくさんあって、病棟に張り付く状態になった。たまに早く帰れる日もあったが、私は夜遅くまで居残った。もし夜間に入院患者が急変したり、救急患者が来たら、先輩医師が適切に対処するのを見て、自分のものにしたかったからである。下宿に帰ったら風呂に入って寝るだけだ。

当時は、女性の看護師を「看護婦」と呼んでいた時代だった。それが染みついていて、今でもつい「看護婦さん」と呼び、看護師長のことを「婦長さん」と呼んでしまうのだ。
その「看護婦さん」は、日勤、準夜、深夜の3交代制で勤務していた。朝、病院に行くと、深夜に勤務していた看護師さんと、出勤してきた日勤の看護婦さんに顔を合わせる。夕方には準夜の勤務に出てきた看護婦さんにも顔を合わせる。そしてさらに、夜の11時を過ぎるころまで居残っていると、深夜の勤務に出てくる看護婦さんにも顔を合わせるのである。
看護婦さんたちは、日勤深夜という勤務もこなす。日勤をしていた看護婦さんが夕方いったん家に帰って再び深夜の勤務に出てくるのである。すると、私は昼間一緒に仕事していた人と夜中にまた顔を合わせることになる。翌朝自分が病院に出勤すると、夜中に合ったその人がまだ深夜の勤務をしているから、そこでまた顔を合わせる。昼、夜中、翌朝と、何だか一日中おなじ看護婦さんと一緒に居たような気になってくる。

どっぷりと病院につかる生活であった。病棟では何をするにしても、まず最初に「看護婦さ〜ん」と声をかけることから始まるのである。
ある日曜日、研修医の同僚にお昼を食べに行こうと誘われた。病院の近くの評判のお好み焼き屋に行った。店は混んでいたが、空いているテーブルが一つあって座ることが出来た。それぞれがメニューを見て注文をきめた。私は大声で店員さんを呼んだ。
「かんごふさ〜ん」